
COLUMN
コラム 〜マラソン豆知識〜
日々マラソン大会への出場に向けてトレーニングを行っているランナーの皆さんの中には呼吸法を意識したトレーニングを行っている方も多いかと思います。
UP RUNのマラソンコラムでもこれまで多くの呼吸法についてご紹介してますが、中級者や初心者ランナーに多い傾向にある点として、長距離を走っていると、どうしても自然と「ハァハァ」と口で呼吸してしまうことはありませんか?
しかし実は、この口呼吸がマラソンのパフォーマンス低下や疲労の原因になる可能性があるのをご存じでしょうか。
マラソンは「心肺機能と効率的な酸素供給」が鍵を握ります。呼吸法は単なる習慣ではなく、ランナーのスタミナ・集中力・回復力に直結する重要な要素です。
今回は、「口呼吸」と「鼻呼吸」の違いや、口呼吸がもたらすリスク、そしてマラソンで実践したい正しい呼吸法について詳しくご紹介いたします。
まだ自身の呼吸法が確立されていないランナーの皆さんは是非参考にしてみてください。
今回はマラソンにおける口呼吸にフォーカスして色々ご紹介しますが、まず先に人間の呼吸には大きく分けて「鼻呼吸」と「口呼吸」があります。
鼻呼吸は鼻から空気を吸って吐く自然な呼吸法で、安静時にはほとんどの人が鼻呼吸をしています。
一方で、口呼吸は運動強度が高まると無意識に起こる代償的な呼吸です。
ではマラソン中に口呼吸になる主な理由どんな要因があるのでしょうか?
■主な要因
・息苦しさを感じ、より多くの空気を取り入れようとするため
・姿勢が崩れ、胸郭(きょうかく=肋骨まわり)がうまく動かなくなるため
・鼻づまりやアレルギー性鼻炎などで鼻呼吸がしづらい状態
・緊張や焦りで浅い呼吸になり、自然と口で吸うクセが出る
一見、口呼吸はたくさんの空気を取り入れられるように思えますが、実際には酸素効率が低く、身体に負担をかける呼吸法というデメリット要素があります。次になぜ口呼吸がおすすめできないのかの理由をご紹介します。
では次に、口呼吸を行う事によるデメリットはどのようなものがあるのかご紹介します。
■酸素の吸収効率が悪い
鼻には「加湿・加温・ろ過」という重要な機能があります。
吸い込んだ空気を体に取り込みやすい温度・湿度に調整してくれるため、酸素が肺胞(はいほう)で効率的に吸収されます。
一方で、口呼吸ではこの調整が行われないため、乾燥した冷たい空気が直接肺に入り、酸素吸収率が低下します。
これにより、同じペースでも息苦しさを感じやすくなります。
■体内の二酸化炭素バランスが崩れる
呼吸は酸素を取り入れるだけでなく、二酸化炭素(CO₂)を排出して血中のpHバランスを整える働きがあります。
ところが、口呼吸で浅く速い呼吸を繰り返すと、必要以上にCO₂を吐き出してしまい、血中の酸素がうまく細胞に届かなくなるのです。
この現象は「過換気」と呼ばれ、頭がボーッとしたり、足が重くなったりする原因にもなります。
■喉の乾燥・感染リスクの増加
マラソン中の口呼吸は、喉や口内の乾燥を招きます。
唾液が減ることで細菌が繁殖しやすくなり、風邪や喉の炎症を起こしやすくなるほか、レース中の不快感にもつながります。
特に冬や乾燥した季節のマラソン大会では、喉のコンディションが悪化しやすく、結果としてパフォーマンスにも影響を及ぼします。
■姿勢とフォームの乱れ
口呼吸をすると顎が前に出やすくなり、首や肩に力が入りやすくなります。
この姿勢変化は、ランニングフォーム全体のバランスを崩し、肩こり・腰痛・脚の疲労増加を引き起こします。
つまり呼吸法の違いは、単に「息のしやすさ」だけでなく、身体全体の連動性にも影響するのです。
ここまでは口呼吸がもたらすデメリットをご紹介しましたが、逆に鼻呼吸はどのような観点でおすすめなかを次にご紹介します。
■酸素を効率的に利用できる
鼻呼吸では吸い込んだ空気が鼻腔で加湿・加温され、酸素が効率よく肺に届きます。さらに鼻腔内で一酸化窒素(NO)が生成され、血管を拡張して酸素を全身に届けやすくする効果も。
このため鼻呼吸を続けることで、少ない呼吸回数でも十分な酸素供給が可能となり、ペースを安定させることができます。
■副交感神経が優位になり、リラックスして走れる
鼻呼吸は自律神経のバランスを整える作用があり、過度な緊張や焦りを抑えてリラックスした走りを導きます。
マラソンでは焦りや興奮による呼吸の乱れが疲労の大きな要因となるため、精神面でも鼻呼吸は有利です。
■心拍数が安定し、エネルギー消費が抑えられる
鼻呼吸では呼吸が深く、ゆっくりになるため、心拍数が乱れにくくなります。
結果として、エネルギー効率が上がり、長時間のランでもスタミナを維持できるようになります。
最後にどのように鼻呼吸を習得すればよいのでしょうか?
実際のところ口呼吸が癖になっている人が、いきなり鼻呼吸でフルマラソンを走るのは難しいものです。まずは日常生活から、少しずつ鼻呼吸を意識して慣らしていくことが大切です。
■ウォーキングやジョグで練習
・ゆっくりしたペースで「吸う:鼻」「吐く:鼻または口」で呼吸
・息苦しくなったら無理せずペースを落とす
・数週間かけて鼻で呼吸できる時間を少しずつ延ばす
「呼吸の苦しさを感じるギリギリのライン」で鼻呼吸を保つのがポイントです。
■姿勢を整える
・胸を開き、背筋を伸ばすと肺が広がり、呼吸がしやすくなります。
・顎を軽く引いて、目線を前方に保つだけでも呼吸の深さが変わります。
「猫背+口呼吸」はセットになりやすいので、フォームと呼吸はセットで意識しましょう。
■鼻呼吸を促すトレーニング法
・鼻テープを貼って寝る(夜間の口呼吸防止)
・ラン中に意識的に「4歩吸って、4歩吐く」のリズムを作る
・坂道練習などで一時的に強度を上げて、呼吸コントロールを体で覚える
こうした練習を積み重ねることで、自然と鼻呼吸中心の走りができるようになります。
ただ、このような点に注意、意識したとしてもレース後半や坂道などで息が上がり、どうしても口呼吸になる場面もあります。
その場合は次のポイントを意識することで、身体への負担を最小限に抑えられます。
・口を「すぼめる」ようにして吐く(呼吸をゆっくりにする)
・吸うときはできるだけ鼻を使い、吐くときだけ口にする
・口内の乾燥対策にマウスピースや保湿ジェルを使う
重要なのは、「完全に口呼吸を排除する」のではなく、鼻呼吸をベースに必要に応じて使い分けることです。

今回はマラソンにおける口呼吸についていろいろご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
マラソンは心肺機能の限界に挑むスポーツですが、呼吸法を意識することで驚くほど走りが変わります。
口呼吸は一時的に楽に感じても、酸素効率や姿勢、体調の面でデメリットが大きく、長期的にはパフォーマンスを下げる原因となります。
一方で鼻呼吸は「酸素供給の効率化」「精神的な安定」「フォームの改善」という3つの側面から、マラソンの質を高めてくれます。
最初は慣れが必要ですが、日々の練習で少しずつ取り入れることで、「呼吸が整った快適なランニング」が実現します。
是非次のマラソン大会や初めて参加するマラソン高いでは、ご紹介した呼吸を味方につけて、より力強く、より長く走ってみましょう!

こんにちは
— UP RUN実行委員会 (@uprun_twx) December 1, 2025
11月もご愛好いただきありがとうございます。
12月も皆様のご参加をお待ちしております。
さて今週のアップランマラソン大会は
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