COLUMN
コラム 〜マラソン豆知識〜
日々マラソン大会に向けてトレーニングに励んでいるランナーの皆さんの中には「もっと速く走りたい」「フルマラソンで後半に失速するのを防ぎたい」と思ってるランナーの方も多いかと思います。また、「ふくらはぎや太ももの疲労がいつも早く来てしまう」「膝の痛みが慢性化していて練習量を増やせない」…そんな悩みも抱えているランナーもいるでしょう。
それらの課題の根本にあるのが、“走るときに本来使うべき筋肉を使えていない”という事実です。
特に多くの市民ランナーにとって、最大の盲点となっているのが臀筋(でんきん)、つまり“お尻”の筋肉です。
「マラソンは足で走るもの」と考えがちですが、正しくはお尻で体を押し出すことによって、無駄のない・効率の良い走りが実現するのです。
実際、多くのトップランナーやトレーナーが「お尻で走れ」と口をそろえて言っています。
今回は、なぜお尻がマラソンにおいて極めて重要なのか、どのように使うのか、どのようなトレーニングを行えばよいのかを、詳しく解説していきます。
まさに今マラソン大会に向けてトレーニングに励んでいるランナーも、これからマラソン大会に挑戦してみようと思っているビギナーランナーの方も参考にしてみてください。
今回はマラソンをお尻で走る事について詳しくご紹介しますが、まず先になぜマラソンをお尻で走るとパフォーマンスが上がるのか?お尻で走れていないランナーの特徴をご紹介していきます。
・お尻で走る事による具体的なメリット
① 推進力とストライドが自然に伸びる
臀筋は脚を後方に蹴る力=股関節の伸展を生み出します。臀筋が強く機能すれば、地面を押し出す力が強まり、ストライドが自然に広がります。
これはピッチ(回転数)を無理に上げる必要がないことを意味し、エネルギー効率の良い“伸びのある走り”を実現します。
② 無駄なブレが減り、フォームが安定する
着地時、片足に体重を乗せた際に、骨盤が左右にブレるとエネルギーが分散し、フォームが崩れます。
中臀筋や小臀筋が働くと、着地時の骨盤の水平が保たれ、無駄なエネルギー消費や怪我の原因となるフォームの乱れを防げます。
③ 太ももやふくらはぎの疲労が軽減される
臀筋が使えていないと、推進力を太もも(大腿四頭筋)やふくらはぎに頼る“代償動作”が起こり、筋疲労が集中します。
臀筋で体を支えられるようになると、下腿部の筋肉負担が分散され、後半の粘り強さが生まれます。
④ 膝・腰・足首の故障予防になる
特に多い「ランナー膝」や「腰痛」の原因は、臀筋が機能せず、膝が内側に入る「ニーイン」や骨盤の過度な前傾・後傾にあります。
臀筋の強化と活用により、骨盤・股関節の位置が安定し、膝や腰への負担を抑制できます。
・お尻を使えていないランナーの典型的な走り方の特徴とは?
1 骨盤が後傾して腰が落ちている
座り姿勢が多い人に多く見られる「骨盤後傾姿勢」は、お尻の筋肉が縮こまり、力を発揮できない状態です。
この状態で走ると腰が落ち、膝が前に出て、結果的に太ももで地面を叩くような走りになります。
2 ふくらはぎ主導の“チョコチョコ走り”
前傾を意識しすぎて足だけが小刻みに動く走りでは、地面を“蹴る”というより“接地しているだけ”の走り方になります。
推進力が生まれず、疲れる割に進まない典型例です。
3 着地が前すぎて“ブレーキ”になっている
着地時に足が身体の重心より前に出ると、地面からの反力が前進方向に働かず、毎歩“自分で自分を止める”状態になります。
これは、臀筋で押し出す感覚がない証拠です。
ここまではメリットをお尻の筋肉を使えていない人の特徴をご紹介しましたが、なぜお尻なのでしょうか?
一口にお尻と言っても様々な筋肉関連性があるので、筋肉にフォーカスしてご紹介します。
■ 大臀筋・中臀筋・小臀筋(三位一体のパワーユニット)
臀筋は単に「お尻の筋肉」と一括りにされがちですが、実は複数の筋肉が複雑に連携して働いています。
大臀筋(Gluteus Maximus)
・人体最大の筋肉
・役割:股関節の伸展(脚を後ろに押し出す)、姿勢維持
・ランニングでは「地面を蹴る」動作に直接関与
中臀筋(Gluteus Medius)
・お尻の上側に位置する
・役割:骨盤の左右バランスを保つ、片脚立ちの安定性
・着地時の体幹安定や横ブレ防止に重要
小臀筋(Gluteus Minimus)
・最深層にある臀筋
・役割:股関節の内旋や内転補助、中臀筋の補佐
これらの筋肉が連動して働くことで、効率的な推進力・安定性・着地衝撃の吸収が可能になります。
しかし、多くの市民ランナーはこれらの筋肉が“眠って”おり、他の部位で代償してしまっているのです。
■ 本来使うべき筋肉を使っていない弊害とは?
臀筋が機能していないことで、以下のような問題が起こります
機能低下した結果 代償的に働く筋肉 起こりやすい障害
推進力不足 大腿四頭筋・ハムストリング 太もも疲労・膝痛
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着地時の不安定性 腰回りの筋群 腰痛・ランナー膝
----------------------------------------------骨盤のぐらつき 体幹や内転筋 フォーム崩壊・転倒
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裏を返せば、臀筋が正しく働くだけで、マラソンパフォーマンスの大半の悩みが改善されると言っても過言ではありません。
最後にお尻を使って走るフォームのコツとトレーニング方法をご紹介していきます。
・フォームのコツとは?
■ 骨盤を立てる
姿勢の基本は“骨盤を立てる”こと。腰を反るのではなく、おへそを引き上げるイメージで立ち、自然なS字カーブを保ちましょう。
■ 足は身体の真下に着地
着地位置が前すぎるとブレーキになります。お尻を意識して、地面を後ろに押す意識を持ちましょう。
■ ヒップドライブを意識する
“脚を振る”のではなく、“お尻で押し出す”イメージで。特に坂道やスピード練習で感覚を掴みやすくなります。
・今すぐできる!お尻を鍛えるトレーニング方法
【1】ヒップリフト(臀筋の基本)
仰向けに寝て膝を立て
お尻を締めながら腰を持ち上げる
上体~膝が一直線になるように意識
→ 10〜15回×3セット
【2】クラムシェル(中臀筋強化)
横向きに寝て膝を軽く曲げる
足をつけたまま上の膝だけ開く
→ 股関節の外旋を意識。左右15回×3セット
【3】ブルガリアンスクワット(体幹+臀部)
片足をベンチに乗せて前脚をメインにスクワット
前脚の踵で地面を押す感覚を重視
→ 10回×3セット(左右)
【4】坂道ダッシュ(実践的な臀筋刺激)
坂を利用すると自然と大臀筋に負荷がかかります。軽い勾配で30~50mのダッシュを数本。疲れすぎない程度で。
日々のトレーニングも重要ですが、日常の成果を少し意識する事もとても重要です。
トレーニング以外の積み重ねもマラソンへの影響は大きくあると考えられます。
・デスクワーク中の姿勢を見直す
猫背で座り続けると臀筋が眠ってしまいます。骨盤を立てて座る習慣をつけましょう。
・日常動作も“お尻で押す”
階段や歩行時にも「お尻で押す」意識を持つと、筋肉の目覚めにつながります。
・走った後のストレッチも忘れずに
臀筋群のストレッチを行うことで、柔軟性と機能性を維持しやすくなります。例:ピジョンポーズ、前屈開脚ストレッチなど。
今回はマラソンはお尻で走るというテーマでいろいろご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
「走る=脚を動かすこと」という思い込みを捨て、“お尻で地面を押す”ことを意識するだけで、走りの質・スピード・持久力がすべて向上します。
お尻の筋肉は、眠っているときには役立ちません。意識的に鍛え、使うことで初めてあなたの走りの強力な武器になります。
走りに伸び悩んでいる方、故障が多い方、フルマラソン後半で失速する方──まずは今日から「お尻で走る」フォームを意識してみてください。地味だけど確実に、走りが変わり始めるはずです!
8月18日は、私たちの健康のための健康食育の日。8と18で「八十八=米」という漢字になることにちなんで決められました。
— UP RUN実行委員会 (@uprun_twx) August 18, 2025
今夏も暑い日々続きますが、お身体ご自愛くださいませ。
さて今週のアップランマラソン大会は
23日
第35回スポーツメイトラン二子新地多摩川ハーフマラソン pic.twitter.com/C9G1Qbysrr