
COLUMN
コラム 〜マラソン豆知識〜
日々マラソン大会に向けてトレーニングに励んでいるランナーの皆様の中には『ケイデンス』という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
マラソンにおいて「速く走る」「長く走る」という能力を支えるのは、単なる体力や筋力だけではありません。ランニングフォームや筋肉の使い方、レース展開の戦略など、あらゆる要素が複雑に絡み合っています。その中でも、比較的知られていながら深く理解されていない指標が「ケイデンス(歩数)」です。
普段なんとなく走っていると自分のケイデンスを意識することは少なく、時計に表示されていても「参考程度」という位置づけで終わるランナーが大半です。しかし、実はケイデンスは走りの効率性、怪我のリスク、疲労の蓄積速度、レース後半の粘りなどに強い影響を与えています。トップ選手から市民ランナーまで、多くのランナーが“走り方の基準”として取り入れるべき非常に重要な要素なのです。
ケイデンスを最適化することは、マラソンのパフォーマンスに大きな変革を起こします。フォームが安定し、接地衝撃が減少し、結果として体への負担が軽減され、エネルギー効率が高まります。また、ケイデンス改善は特別な才能や高額な機材が必要なく、「意識づけ」と「簡単なトレーニング」で誰でも習得できます。
今回は、マラソンにおけるケイデンスの重要性、その科学的背景、最適値の考え方、改善方法、そして実際の練習メニューまで、ランナーが今日から使える具体的な内容を総合的にご紹介します。
「記録を伸ばしたい」「後半に失速しない走りを身につけたい」「怪我なく長くランニングを続けたい」と願う方にとって、ケイデンスは必ず味方になるはずです。
まずはじめに、ケイデンスという言葉自体を正しく理解することが必要です。時計に表示されている数値を何となく見ているだけでは、走りを改善することはできません。ケイデンスがランニングにどのように影響する指標なのか、基礎からご紹介していきます。
ケイデンス(cadence)とは、【1分間に踏む歩数=ストライド数(SPM:steps perminute)】のことです。
GPSウォッチやランニングアプリを使えば、自然と計測されるため、誰でも簡単に確認できます。
■ケイデンスがマラソンに与える影響
・フォームの安定性向上
・着地衝撃の軽減
・エネルギー効率の向上
・ピッチ走法の実現
・レース後半の粘り強さの向上
科学的にも、ケイデンス向上によって接地時間が短くなり、「跳ねる走り」から「前に進む走り」へ変わることが判明しています。
ケイデンスを語るうえで必ず出てくるのが“180spm”という数字です。ランナーなら一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、この数字の背景や本当に自分に当てはまるのかは、意外と理解されていません。この章では、その「180神話」の正体と、個人に合わせた最適ケイデンスの考え方を次にご紹介します。
“ケイデンス180”という評価は、1984年ロサンゼルス五輪の観察研究でエリートランナーの多くが180前後だったことに由来します。しかし、それはエリート選手の話であり、市民ランナーにそのまま当てはめるのは正しくありません。
■ランナーのレベル別の現実的な目安
レベル 目安ケイデンス
初心者 155〜165 spm
中級者 165〜175 spm
上級者 175〜185 spm
■身体特性による違い
身長が低い → ケイデンスは高くなりやすい
身長が高い → ケイデンスが低めでも効率的
股関節や体幹筋力の差で最適値が変わる
つまり、多くの市民ランナーにとっては170前後が現実的で効率の良い目標なのです。
ケイデンスを改善すると良いと聞いても、「具体的に何が変わるのか?」が明確でないと、練習に取り組むモチベーションにはつながりません。ここでは、ケイデンスを引き上げることで得られるメリットを科学的・実践的に整理してご紹介します。
■着地衝撃の軽減
ケイデンスが低いと大またになり、いわゆるオーバーストライドが発生します。これは膝への負担を増やし、ブレーキ動作につながります。ケイデンスを高めれば一歩がコンパクトになり、真下着地に近づいて衝撃が減少します。
■フォームの安定につながる
ケイデンスが上がると上下動が減り、ブレの少ない走りになります。体幹が安定し、効率的に前へ進むフォームが自然に形成されます。
■後半の失速が減る
ストライド頼みの走りは筋力疲労とともにペースが大きく落ちます。一方、ケイデンス中心の走りは回転によるペース維持がしやすく、30km以降の粘りにつながります。
■心肺負荷が安定
回転数を基準にペースを作ることで、心拍も乱れにくくなります。一定のリズムで走ることは、持久力の発揮に大きなメリットとなります。
ケイデンスを改善するためには、現在の数値を正確に知ることが不可欠です。感覚だけで走りの変化を判断すると、意外と誤差が大きく、改善が進みません。時計やアプリを活用すれば誰でも簡単にチェックできるため、ここで確認方法をご紹介します。
GPSウォッチやランニングアプリを使えば、自動でケイデンスが計測されます。
練習後のデータを見ると、前半は175、後半に160まで低下といった変化などが分かり、自分の失速パターンが“見える化”されます。
ケイデンスの改善は、難しい技術を必要としません。むしろ、小さな意識づけと軽いドリルを積み重ねることで、誰でも無理なく向上できます。ここでは初心者でもすぐに取り組める実践的なトレーニング方法を紹介します。
■腕振りをコンパクトに速くする
腕を速く振ると脚も自然と連動して動きやすくなり、ケイデンスが上がります。肩の力を抜き、肘を後ろへ軽く引く意識を持つと効果的です。
■メトロノームアプリの活用
一定のリズムに合わせて走る方法です。165〜170spmあたりから始め、慣れたら2〜3spmずつ増やすと自然にケイデンスが上がっていきます。
■速歩きドリル(シャドウラン)
脚を大きく動かさず、リズムよくステップする練習です。
30秒×5〜10セットなど、短い時間で効果が出ます。
■坂道トレーニング
軽い上り坂は自然とピッチが上がるため、ケイデンス改善の定番方法です。30〜60秒の坂ダッシュを数本行います。
■ショートレペ(100〜200m)
短い距離を軽快に走ることで、ピッチ走法の感覚が身につきます。
練習でケイデンスを身につけても、レースで活かせなければ意味がありません。マラソン本番は緊張や周囲のペースに影響されやすく、ケイデンスも乱れがちです。この章では、レースの前半・中盤・後半それぞれでどのようにケイデンスを管理するべきかをご紹介します。
■レース前半
ケイデンス170前後で安定させる
周囲のランナーにつられてストライドが伸びないよう注意
■中盤
ケイデンス低下がないか定期的にチェック
腕振りを使って回転数を維持する
■30km以降の後半
ストライドに頼らず「ケイデンス維持」
165spmを下回らない意識を持つ
ケイデンスを基準にペースを作ると、後半の失速を最小限に抑えられます。
走りのリズムを決めるケイデンスは、シューズとの相性にも大きく影響します。
特に近年主流の厚底カーボンシューズは、ケイデンスが高いほど性能を引き出しやすいと言われています。この章ではその理由と、レベル別のおすすめの方向性をご紹介します。
厚底カーボンシューズは、接地時間が短いほど反発を効率的に利用できます。そのため、ケイデンスが高いランナーほど恩恵を感じやすい特徴があります。
逆にケイデンスが低い初心者は、反発を扱いきれずフォームが乱れやすいため、軽量で安定感のあるシューズの方が相性が良いケースも多くあります。
ケイデンスを効果的に高めるには、日々のトレーニングに“少しの工夫”を加えるだけで十分です。バラバラに練習するのではなく、一定の流れで取り組むと着実に改善が進みます。
最後に、週3回を想定したケイデンス向上プログラムをご紹介します。
■週1回:ケイデンス意識ジョグ(40〜60分)
・最初10分は自然なケイデンス
・中盤20〜30分を“+5spm”で走る
・軽いクールダウンで終了
■週1回:坂ダッシュ or テンポ走
・ゆるい坂で30秒ダッシュ×5
・もしくはテンポ走20分(ケイデンス170目安)
■週1回:ドリル+ショート走
・速歩きドリル30秒×6
・100m流し×4
■月1回:レースペース走
・レース本番用のケイデンス確認として実施。

今回はマラソンのケイデンスについてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
マラソンは持久力だけでなく効率のスポーツです。その中でケイデンスは、フォーム、衝撃、疲労、ペース維持など多くの要素を左右する非常に重要な指標です。
・170前後を基準にする
・腕振りとメトロノームを活用
・練習メニューに回転数向上の要素を追加
・レースでは後半のケイデンス低下に注意
ケイデンスは自然に伸びるものではなく、意識してこそ改善します。しかし、改善のハードルは決して高くありません。少しの工夫の積み重ねで、走りは確実に変わっていきます。
今日から“自分の最適リズム”を見つけ、より効率よく強いランニングフォームを身につけていきましょう。

こんにちは
— UP RUN実行委員会 (@uprun_twx) November 25, 2025
11月25日の誕生花はガーベラ
花言葉は【常に前進】
さて今週のアップランマラソン大会は
29日
第4回UPRUN豊洲ハーフマラソン
第90回スポーツメイトラン新横浜鶴見川マラソン
30日
第71回UPRUN府中多摩川風の道マラソン
第79回スポーツメイトラン東大島小松川公園ハーフマラソン pic.twitter.com/IlcS2JuuVT