COLUMN
コラム 〜マラソン豆知識〜
日々マラソン大会に向けてトレーニングに励んでいるランナーの皆さんは様々なシューズを履いては走ってらっしゃるかと思います。
マラソンは、アスリートが自らの限界に挑む競技であり、特に近年は技術革新によって多くの進化が見られます。その中でも最も注目されているのが「厚底シューズ」の登場です。厚底シューズは単なるファッションやデザインのトレンドを超えて、マラソンランナーのパフォーマンスに直接的な影響を与え、長距離競技に新たな波を起こしています。
今回はそんな厚底シューズの歴史的背景、技術的特徴、パフォーマンスへの影響、そしてその論争や批判について、ご紹介していきます。
様々な意見が飛び交う厚底シューズですが今検討しているランナー、購入されているランナーの方も是非参考にしてみてください。
厚底シューズがマラソン界で注目されるようになったのは、比較的最近のことです。特に、ナイキの「Vaporfly」シリーズが登場したことが転換点となりました。このシューズは、他のランニングシューズとは異なる革新的な技術を採用しており、その影響でマラソン競技の世界記録が更新されることも多くなりました。
初期のランニングシューズは、主に軽量さや耐久性に焦点を当ててデザインされていました。しかし、これらのシューズは足の保護機能やエネルギー効率の向上を考慮したものではありませんでした。1990年代後半から2000年代にかけて、シューズメーカーはクッション性やサポート機能に力を入れ始め、足への衝撃を軽減する技術が進化しました。しかし、本格的な厚底シューズの登場は2010年代後半になってからです。
厚底シューズの火付け役となったのは、2017年にナイキから発売された「Vaporfly 4%」です。このシューズは、従来のランニングシューズとは一線を画し、その名前が示す通り、ランナーが平均して約4%速くなることを目標に設計されました。その秘密は、厚底構造とカーボンファイバープレート、そしてエネルギーリターンを向上させる特殊なフォームにあります。この革新的なデザインにより、多くのトップアスリートが世界記録を更新し始め、Vaporflyは一躍注目の的となりました。
厚底シューズの最大の特徴は、その構造にあります。厚みのあるミッドソールや内蔵されたカーボンファイバープレートなど、従来のシューズには見られなかった要素が多く取り入れられています。これらの技術がどのようにランナーのパフォーマンスに影響を与えるのかを、具体的に見ていきましょう。
【厚底ミッドソールの役割】
厚底シューズのミッドソールは、従来のシューズに比べて遥かに厚く、柔らかい素材で作られています。この素材はエネルギーリターン率が高く、ランニング中に足が地面に接触した際に生じるエネルギーを効率的に吸収し、再びランナーの推進力として返す役割を果たします。これにより、ランナーが消費するエネルギーは減少し、より少ない力でより長く、速く走ることが可能となります。
【カーボンファイバープレートの効果】
厚底シューズに内蔵されているカーボンファイバープレートは、シューズ全体の剛性を高め、ランニング時の前方への推進力をサポートします。プレートが足を「跳ね返す」ような感覚を生み出し、ランナーは自然に前へ進むような動作を感じることができます。これは、特に疲労が蓄積してくる後半のレースで大きなアドバンテージとなります。プレートはまた、足首や膝にかかる負担を軽減し、怪我のリスクを減少させる効果も期待されています。
【フォームの素材とその特性】
Vaporflyシリーズに代表される厚底シューズでは、ZoomXという特殊なフォームが使用されています。このフォームは非常に軽量でありながら高いエネルギーリターン率を持っており、シューズ全体のパフォーマンスを引き上げる重要な要素です。従来のEVAフォームと比較すると、より柔らかく、反発力も高いため、足への衝撃を和らげつつも推進力を維持します。このフォームの開発は、シューズメーカーにとっての大きな技術革新であり、マラソンシーンにおいても大きな変革をもたらしました。
ここまでは厚底シューズの歴史と特徴をご紹介しましたが、ここからは厚底シューズを履くことによるメリットとデメリットをご紹介していきます。
【厚底シューズのメリット】
・エネルギー効率の向上
厚底シューズの最大のメリットは、エネルギー効率を高める点です。多くの厚底シューズには、軽量かつ反発力の高いフォームが使用されており、ランナーが地面を蹴った際のエネルギーを効率的に足に戻すことができます。特にナイキの「ZoomX」フォームなどは、高いエネルギーリターンを持つため、長距離を走る際に疲労感を軽減し、スピードを持続させることが可能です。
また、シューズ内に埋め込まれたカーボンファイバープレートが足の推進力をサポートし、自然に前方への力を生み出す「スナップ効果」が得られます。これにより、少ない力で効率的にスピードを維持することができ、マラソンの後半におけるパフォーマンスの低下を防ぐ助けとなります。
・衝撃吸収性と怪我の予防
厚底シューズのクッション性が優れていることも、大きなメリットです。厚みのあるミッドソールは、走行中の衝撃をしっかり吸収し、足や膝、腰にかかる負担を軽減します。マラソンのような長距離走では、レース後半になると筋肉の疲労が蓄積し、足が地面に強く打ち付けられがちですが、厚底シューズのクッションがこれを和らげてくれるため、怪我のリスクを減少させることができます。
・長距離ランナーにとっての疲労軽減効果
長時間のランニングでは、足の裏やふくらはぎ、膝などに疲労がたまりやすくなります。
厚底シューズの構造は、この疲労を軽減し、ランナーのパフォーマンスを維持するために設計されています。特にマラソンの後半で、筋力や体力の低下によりフォームが崩れがちな状況でも、厚底シューズが足をしっかりサポートしてくれるため、正しい走りを保つことが可能です。
・記録更新の助けとなる
エリートランナーが厚底シューズを履いて自己ベストを更新する事例が多く見られるように、厚底シューズは特にレースでのパフォーマンス向上に効果を発揮します。厚底シューズの高いエネルギー効率と反発力が、自己記録の更新や目標タイム達成に向けた重要な要素となっています。
【厚底シューズのデメリット】
・価格が高い
厚底シューズのデメリットの一つは、価格が高いことです。先進的な素材や技術を用いているため、特にナイキやアディダスといったトップブランドの厚底シューズは、数万円することが多く、一般のランナーにとってはコストが大きな負担となる可能性があります。
・ランニングフォームの依存
厚底シューズは高い反発力を持っているため、フォームが崩れるとその効果が逆に怪我のリスクを高めることがあります。特に、速く走ろうと無理にフォームを変えると、足や膝に負担がかかりやすくなります。ランナーが厚底シューズに過度に依存してしまうと、自然なフォームでの走り方が難しくなることがあり、これが怪我や疲労の原因となる可能性もあります。
・足裏の感覚が薄れる
厚底シューズはクッション性が高い一方で、地面からのフィードバックを感じにくくなるというデメリットもあります。足裏の感覚が薄れることで、路面の状態やバランス感覚をつかむのが難しくなることがあり、特に不整地や滑りやすい路面でのランニングには向かない場合があります。
・重さが増すことによるデメリット
厚底シューズはその構造上、従来の薄底シューズに比べてやや重くなることがあります。特に長距離を走る際、わずかな重さの違いが後半の疲労感に影響を与えることがあります。軽量なシューズを求めるランナーにとって、厚底シューズの重量感がデメリットとなる場合もあります。
厚底シューズの技術的な進化は、ランニング業界に革新をもたらした一方で、スポーツ界における技術依存の問題も浮き彫りにしました。特に、カーボンファイバープレートの導入が「テクノロジーの過度な使用」として議論の対象となり、一部の批判者はシューズが競技結果に与える影響を懸念しています。
しかし、規制が設けられたことで、今後も技術革新が進みながらも、公平性を保った競技環境が整えられていくでしょう。厚底シューズはその高い効果を維持しつつ、さらに進化していくことが期待されます。
今回は厚底シューズについて様々な視点でご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
厚底シューズは、マラソンにおいて多くのメリットを提供する一方で、デメリットやリスクも存在します。エネルギー効率の向上や衝撃吸収性、疲労軽減といった利点は、特に長距離ランナーにとって大きな強みとなりますが、価格やフォームへの影響なども考慮しながら、自分に合ったシューズを選ぶことが重要です。正しい使い方をすれば、厚底シューズは確実にマラソンパフォーマンスを向上させるための強力なツールとなるでしょう。
こんにちは(^^)
— UP RUN実行委員会 (@UP_RUN_tw) November 18, 2024
今日は運動したくなる程冷えますね...
お風邪にお気をつけください
さて今週のアップランマラソン大会は
23日
第196回UP RUN皇居マラソン
第73回ポーツメイトラン赤羽荒川ハーフマラソン
24日
2024渡良瀬遊水地オータムマラソン
まだまだお申込み可能☆https://t.co/Vgd4Q7k45n pic.twitter.com/clK6XDfA9R