COLUMN
コラム 〜マラソン豆知識〜
日々マラソン大会に出場するためにトレーニング励んでいるランナーの皆さんも含めて健康志向の高まりとともに、ランニングやマラソンに挑戦する人が年々増えています。
大会に向けて日々トレーニングに励み、完走したときの達成感は何物にも代えがたいものです。しかし、そのマラソンやランニング直後にこう感じたことはありませんか?
「なんだか喉がイガイガする…」
「大会のあと、風邪をひいてしまった」
「疲れが取れず、体調がなかなか戻らない」
これは気のせいでも、たまたまでもありません。実は、激しい持久運動の後には一時的に免疫力が低下することが、多くの研究で明らかになっているのです。
特にマラソンのような長時間に及ぶ運動では、体は大きなストレスを受け、感染症や体調不良を引き起こしやすくなります。つまり、せっかく健康のために走っているのに、その直後に体調を崩してしまうリスクがあるということです。
今回は、なぜマラソンで免疫力が下がるのか、その仕組みと原因を科学的に解説しつつ、風邪や体調不良を防ぐために今日からできる予防策も詳しく紹介します。
「走ること」をもっと安心して楽しむために、ぜひ最後まで読んでみてください。
マラソンは、運動の中でも最も過酷なカテゴリに属する持久系スポーツです。42.195kmという長距離を何時間もかけて走り続けることで、心肺機能や筋持久力、精神的な強さが鍛えられる一方で、身体には相当な負荷とストレスがかかっています。
近年、スポーツ医学や運動生理学の分野で「運動と免疫機能の関係」についての研究が進んでおり、その中でも特に注目されているのが長時間にわたる激しい持久運動が免疫力を一時的に低下させるという事実です。
1.適度な運動は「免疫力を高める」
まず大前提として、軽度〜中等度の運動は免疫系に良い影響を与えることが知られています。例えば、30分程度のウォーキングや軽いジョギングには、以下のような効果があるとされています。
・血流やリンパの流れが促進され、免疫細胞の巡回が活性化
・体温の上昇によってウイルスや細菌への防御力が高まる
・ストレスホルモン(コルチゾール)が低下し、精神的にも安定
これにより、日常的に運動している人は、風邪やインフルエンザの罹患率が低いという研究報告もあります。しかし、問題は「やりすぎたとき」に起こります。
2.強度の高い持久運動は「免疫を一時的に抑制する」
マラソンやトライアスロン、長時間の高負荷トレーニングは、身体にとって「強いストレス刺激」となります。その結果、以下のような免疫抑制反応が起きるのです。
・白血球の中でも感染防御に関わるリンパ球が減少
・唾液中の免疫物質(IgA)が大幅に低下
・炎症性サイトカインの増加により、身体の炎症反応が強くなる
・ストレスホルモンが急上昇し、免疫系を抑制
このような状態は「オープンウィンドウ(免疫の窓が開いた状態)」と呼ばれており、運動直後から数時間〜72時間にかけて、体が病原体に対して無防備になる期間が存在するという理論です。
3.マラソン後の感染症リスク
マラソン大会に参加した数千人を対象とした調査では、大会後1週間以内に風邪などの上気道感染症を経験したランナーの割合が、一般人よりも2〜6倍高かったという研究結果もあるようです。
また、アスリートでも過剰なトレーニングや大会スケジュールが続くと、感染症による欠場率が上がることが統計的にも明らかになっています。これはプロ選手に限らず、趣味でマラソンを楽しむ市民ランナーにも当てはまる現象です。
健康のために運動するという事は誰しも承知の上で考えると、体にいい運動をしているのに免疫力が下がるというのは、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、これは「運動がストレス刺激だから」です。運動には「良いストレス(ホルミシス効果)」がありますが、それも量を超えれば「悪いストレス」になってしまうのです。
つまり、適量の運動は薬にもなるが、過剰な運動は毒にもなるということ。
上記を踏まえたうえで、マラソン後に免疫力が落ちる主な要因、メカニズムは以下の点が挙げられます。
① コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌増加
マラソンなどの持久運動では、身体が大きなストレスを受けるため、副腎皮質から「コルチゾール」というストレスホルモンが大量に分泌されます。このホルモンは、短期的には炎症を抑えたりエネルギーを供給したりする良い働きもあるのですが、長時間にわたって高濃度になると免疫細胞の働きを抑制してしまうのです。
② 白血球の一時的な減少
運動中は血流が増加し、白血球(特にリンパ球)の数も一時的に増えるのですが、運動後には急激に減少します。これは血中から組織内に移動したり、アポトーシス(細胞の自然死)によって数が減ることが原因です。
③ 粘膜免疫の低下
唾液中に含まれる「IgA(免疫グロブリンA)」は、口や鼻、喉の粘膜をウイルスや細菌から守る重要な免疫因子ですが、激しい運動後はその分泌量が減るため、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。
一般的に、1時間を超える高強度の持久運動が続いた場合、免疫機能への影響が顕著になるとされています。
特にフルマラソン(42.195km)やウルトラマラソンのような長時間運動では、回復にも時間がかかるため、免疫低下のリスクも高まります。一方で、30分程度の軽いジョギングではむしろ免疫を高める効果があるとされています。
・免疫低下によって起こりやすい症状
マラソン後の「オープンウィンドウ」期間中には、以下のような症状が起こりやすくなります。
風邪(咽頭痛、咳、鼻水)
インフルエンザ(冬季)
胃腸炎(食中毒に近い症状)
口内炎・ヘルペス(再発型ウイルス)
肌荒れ、疲労感、集中力の低下
特に睡眠不足や栄養不良、過剰なトレーニングといった複数のリスク因子が重なると、影響が大きくなるため注意が必要です。
とはいえマラソン大会に向けてトレーニングに励んでいるランナーの皆さんは、メニュー量を抑えるなんて難しい方もいらっしゃるかと思います。
免疫低下を完全に防ぐことは難しいですが、以下のような対策を取ることで、リスクを大きく軽減することができます。
・十分な睡眠
睡眠は免疫力の回復に最も重要です。大会前後は特に7〜9時間の質の良い睡眠を心がけましょう。
・栄養バランスの良い食事
ビタミンC・E(抗酸化作用)
亜鉛・鉄分(免疫細胞の生成)
タンパク質(筋肉修復と免疫維持)
これらの栄養素を意識して摂取しましょう。免疫力サポートのサプリも役立つ場合があります。
・運動後の冷却と回復ケア
クールダウンやストレッチを丁寧に行う
温冷シャワーやアイスバスの活用
十分な水分補給(脱水も免疫低下の原因)
・手洗い・うがい・マスクの徹底
大会後やトレーニング後、人混みの多い場所に行くと感染リスクが高まります。基本的な衛生習慣が最も有効です。
・トレーニング計画の調整
疲労が抜けていないときに無理なランニングをすると、慢性的な免疫低下を招きます。強度と回復のバランスを取った練習計画が重要です。
今回はマラソンと免疫力の低下についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
マラソン後に免疫力が低下するのは科学的に証明された現象であり、そのメカニズムは身体のストレス反応や免疫細胞の動態によるものです。
しかし、「だからマラソンは体に悪い」というわけではありません。適切な栄養・睡眠・回復ケアを行うことで、このリスクは大きく軽減できます。
マラソンという素晴らしいスポーツを、より安全に、長く楽しむためにも、自分の体の声に耳を傾け、無理のない範囲でのトレーニングを心がけましょう。
こんにちは
— UP RUN実行委員会 (@uprun_twx) June 2, 2025
本日の誕生花はミムラス。
花言葉は笑顔を見せて(^^)
さて今週のアップランマラソン大会は
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第23回UPRUN赤羽荒川マラソン~全種目ver~
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