COLUMN
コラム 〜マラソン豆知識〜
日々マラソン大会に向けてトレーニングに励んでいるランナーの中には、大会当日の様々なシチュエーションを想定してメニューを組み、実践している方もいらっしゃるかと思います。
マラソンという競技は、42.195kmという距離をいかに効率よく、そして自分のベストを尽くして走り切るかが問われる持久戦です。体調管理や練習を積み重ねた走力はもちろん重要ですが、それと同じくらい“当日の天候”がレース結果を左右するという事実は、意外と見落とされがちです。
その中でも「風」の影響は顕著です。気温や湿度と違い、風は瞬間的な変化や局所的な強さがあるため、予測が難しく、レース中に体感として大きなインパクトを残します。
特に「向かい風」は、走行中の空気抵抗を増やし、想像以上に体力を奪う厄介な存在です。風速わずか3〜4m/s(時速10〜15km程度)でも、ランナーにとっては持続的な「壁」となり、フォームの乱れやペースの低下、さらには集中力の喪失にまでつながりかねません。
大会によっては、沿岸部や広大な河川敷、開けた農地を走るようなコース設計がされており、こうした場所では風の影響を強く受けることがあります。たとえ晴天で気温が理想的であったとしても、強い向かい風が吹けば、それだけで「自己ベスト更新」が遠のいてしまう可能性があるのです。
しかし逆にいえば、向かい風という自然の壁に対して、事前に知識と準備をもって臨むことで、他のランナーよりも一歩リードすることも可能です。
今回は、向かい風がマラソンに与える具体的な影響を解説したうえで、その対処法やレース中の戦略、さらには風に強い身体を作るためのトレーニングまで、総合的にご紹介いたします。
気象条件が悪い日でも、冷静に、そして粘り強く走りきるために是非参考にしてください。
向かい風とは、進行方向に対して正面から吹きつける風のことを指します。マラソンにおいて、この風はランナーの動きを直接的に妨げる要因となり、身体的・精神的な負担を増大させます。
1.エネルギー消費の増加
風速が時速10kmを超えるような向かい風になると、空気抵抗が顕著になります。ランナーは本来のペースを維持するために、風の力に抗してエネルギーを多く消費しなければなりません。特に、体の前面積が大きいランナーは空気抵抗の影響を強く受けやすく、筋力と持久力の両方が試される状況となります。
2.ペースコントロールの困難さ
向かい風下では、通常の感覚で走っているつもりでもペースが落ちてしまうケースが多発します。無理にスピードを維持しようとすれば、後半の失速リスクが高まり、逆にペースを落としすぎるとレース全体のタイムが崩れてしまいます。こうした風の影響は、風速だけでなく、コースの起伏や周囲の建物配置にもよるため、経験と戦略が必要となります。
3.体温調整・精神的ストレス
気温が低い中での向かい風は、体感温度をさらに下げ、筋肉の柔軟性を失わせる可能性もあります。また、風による音や息苦しさ、フォームの乱れなどが蓄積すると、精神的なストレスも高まり集中力を欠いてしまうことがあります。
ここまでは向かい風が与える影響をご紹介しましたが、実際向かい風の際に効率的な走り方はあるのでしょうか?
次に向かい風の際に無駄のない効率的な走り方をご紹介します。
1.無理に風を突き抜けない
向かい風に対して無理にスピードを維持しようとすると、体力を早期に消耗してしまいます。レースの前半や風が強い区間では、意識的に5〜10秒/kmほどペースを落とし、エネルギーの無駄な消費を抑えることが重要です。その分、風が弱くなる区間や追い風区間でリカバリーする戦略が有効です。
2.姿勢を少し前傾に保つ
風の抵抗を減らすために、フォームの工夫も必要です。背筋を伸ばしたまま、骨盤から前傾するような姿勢を保つことで、体の前面積をやや縮小し、風を受ける面積を減らすことができます。肩の力を抜き、腕振りを小さめに保つことで、余計なエネルギーの浪費を防ぎます。
3.集団走を活用する
他のランナーの後方を走ることで、風よけの効果が得られます。特に風が強いレースでは、集団の中で位置取りを工夫し、上手に「ドラフティング」(風除け)を活用することが、体力の温存につながります。集団走に不慣れな人は、練習時からグループランに参加して、位置取りやペース感覚を磨いておくとよいでしょう。
ここまでは、影響と向かい風の時の効率的走り方をご紹介しました。
日々の練習においても、向かい風への耐性を養うトレーニングを取り入れることで、本番でのパフォーマンス向上につながります。
次に向かい風時を想定したトレーニング方法をご紹介いたします。
1.実際に風のある日に練習する
あえて風の強い日を選んで走ることで、風に対する感覚や対処法が自然と身についてきます。フォームの見直しやペース調整の感覚を体得する良い機会となるため、定期的に「風トレ」を取り入れると効果的です。
2.インターバル走・ビルドアップ走
風に対して踏ん張る力を養うには、インターバル走などで筋持久力とスピードの強化を図ることが重要です。また、ビルドアップ走(徐々にペースを上げる走り)を通して、身体のエネルギー配分能力を鍛えることで、向かい風区間とそうでない区間での戦略的な走りが可能になります。
3.筋トレによる基礎体力向上
特に体幹や下半身の筋力を強化することで、風に押されてもフォームが崩れにくくなります。スクワット、ランジ、プランクなどの自重トレーニングを継続することで、長距離を安定して走るための「軸」ができ、結果として風に対して強い身体が作られます。
影響、効率が良い走り方、トレーニング方法をご紹介しましたが、最後に装備などちょっとした小技をご紹介します。
レース当日のちょっとした工夫で、風の影響を和らげることも可能です。
1.ウェアはフィット感重視
風の抵抗を減らすために、できるだけ体にフィットするウェアを選びましょう。バサバサと風になびくような素材やサイズは避けるのが無難です。
2.帽子は風で飛ばないものを
キャップをかぶる場合は、あご紐やしっかりとフィットするランキャップを使用しましょう。
3.ワセリンの活用
風が強く寒い日には、ワセリンを顔や手足に塗ることで、乾燥や冷えによるダメージを軽減できます。
4.レース展開の工夫
マラソンにおいて風向きは、レースの展開を大きく左右する重要な要素です。事前にコースマップや当日の天気予報を確認し、どの区間で向かい風、追い風、横風が吹くのかを把握することで、戦略的な走りが可能になります。
たとえば、スタートから中盤にかけて向かい風が予想される場合は、あえてペースを落とし、風をやり過ごす「耐える走り」を意識しましょう。エネルギーを温存して後半の追い風区間で一気にペースアップする、いわば「ネガティブスプリット(後半型)」のレース展開が有効です。逆に、前半が追い風で後半が向かい風の場合は、前半でやや攻め気味に走ってタイムを稼ぎ、後半の風に備えて体力を残す「ポジティブスプリット(前半型)」が選択肢となります。
こちらは他の記事でも紹介をしていますので是非そちらも参考にしてみてください。
『マラソンをするうえで覚えておきたい『ネガティブスピリット』『ポジティブスピリット』とは?』
また、コースによっては、海沿いや橋の上、建物の少ないエリアなど風の影響を受けやすい区間が存在します。これらのポイントでは事前に風向きを想定し、集団の中に入る、フォームを省エネ仕様にするなど、具体的な対応を練っておくことが大切です。レース中の風の変化にも柔軟に対応できるよう、戦略に幅を持たせておきましょう。
今回は向かい風時のマラソンにおける影響からトレーニング方法までご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
向かい風はマラソンにおける大きな試練の一つですが、正しい知識と工夫によって、その影響を最小限に抑えることが可能です。
無理に抗うのではなく、風を理解し、うまく「利用」することで、他のランナーに差をつけるチャンスにもなります。風の日の練習や、集団走の技術、装備の選び方など、日頃から備えておくことで、過酷なコンディションでも自信をもって走れるようになります。
こんにちは☆
— UP RUN実行委員会 (@uprun_twx) May 12, 2025
11日は母の日
色々な過ごし方がありますが、よい一日だったらなによりです☆
さて今週のアップランマラソン大会は
17日
第59回スポーツメイトラン松戸江戸川河川敷マラソン
18日
第68回UPRUN府中多摩川風の道マラソン
第67回スポーツメイトラン堀切水辺公園マラソン pic.twitter.com/aRpFJhOhnW